脈診・鍼専門
最近、最も著効があった【症例】をご紹介します。




【症例1】 25才・女性
航空会社に勤務し、立ち仕事の業務が多くなってから、夕方になると腰骨の付け根から背中にかけて鈍痛が強く、腰から足の筋肉が張って痛む。
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腰のツボに、0.20ミリの鍼を7ミリ刺入して、筋肉の緊張を緩めて、知熱灸で末梢循環を改善したところ、12回で腰の痛みが完治。その後、肩こりの治療も行った。

【症例2】 29才・女性
コンピュータ会社に勤務。パソコンを打つ業務が多く、手首から肘、肩にかけて痛みが走り、腕全体が熱く、ピリピリする感じが苦痛。
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肘のツボ、手首のツボに0.18ミリの細い鍼を5ミリ刺入して、末梢循環を改善して、皮膚の表面の炎症を取ることを目的に、皮膚に接する程度の接触鍼の治療を行う。最後に、炎症を散らす目的で知熱灸を行う。8回で痛みが完治。

【症例3】 34才・男性
大手のインターネット会社の営業で忙しい日が続いていたが、突然、朝起きたら首に激痛を覚え、首が回らなくなった。病院で痛み止めの薬を服用するが痛みが全く取れない。
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肩の後方のツボ、肩の真ん中のツボ、首の後ろのツボ、肘にある肩に効くツボに、0.20ミリの鍼を1センチ刺入して、強めの刺激を与える。目的は、鎮痛効果。その後、知熱灸で末梢循環の改善を図る。4回の治療で痛みと首の動作が完治。その後、全身の疲労回復の治療を行う。

【症例4】 19才・女性
大学生で高校のころから1年に何回も足首の捻挫をする体質で、長く歩けない、運動が出来ない、サンダルが履けない、を訴えて来院する。
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足首外側のくるぶしのツボ、アキレス腱の緊張を取るツボ、内くるぶしのツボに、0.18ミリの鍼を2ミリ刺入して、その後、くるぶしの内側の炎症を取る目的で、接触鍼をくるぶしの内側、外側に行う。
最後に毛細血流を改善するために、知熱灸を行う。8回の治療で完治。現在は、大学でヒップホップダンスを行っている。

【症例5】 48才・男性
製薬会社の営業。3ヶ月前に突然、右足の裏、踵(かかと)が痛くなり、踵を床に着けると強い痛みが走る。整形外科に行っても痛みが取れない。
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足の土踏まずと踵に、0.18ミリの鍼を1ミリ刺入して、炎症の消失効果。
その後、踵の血流改善を目的に知熱灸を行う。6回で痛みが完全に取れ完治。

【症例6】 26才・女性
英語の教師。半年前にイギリスから英語の教師として来日、人間関係によるストレスで、肩こり(肩全体の異常な緊張感)、頭痛、不眠、食欲不振を訴え来院。
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肩甲骨の内側のツボ、肩の真ん中のツボ、背中全体に鍼を0ミリの接触するだけの手法、接触鍼、円鍼で末梢循環を改善する。外国人は皮膚刺激に敏感体質の人が多い。この方法を4回で改善し完治。

【症例7】 24才・女性
胃痛。OL。半年前から胃痛を感じ、病院で胃カメラやバリュームの検査を行う。胃はただれているが異常はない。しかし、午後になると肩が凝ってきて、首がつまり、頭痛がして吐き気の後に胃がキリキリと痛くなり、座り込む程痛くなってしまう。
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手首の脈を診ると、脾と胃の脈が弱っている。お腹の中央に触れると硬く緊張している。背中の真ん中が硬く背筋が異常に凝っている。(内臓が弱ると背中に凝りが出てきます。)

足の三里、腹の中央にある中完、背中にあるツボ、胃兪、胃倉、三焦兪、肓門、胃の痛み、弱りに効くツボに、0.18ミリの鍼を5〜8ミリ打って、ツボの硬結を取る手法(1〜2ミリ鍼を前後に動かす)テクニックを加えました。
その後、背中全体に皮膚に接する程度の接触鍼の術を行い、背中全体の血流を改善して、自律神経のバランスを取ってあげる。この治療を6回行う。その結果、キリキリ痛む胃痛は完全に治り、肩、首、背中の凝りも同時に治る。現在はダイエットと足のむくみの改善治療を行っています。

ちなみに、この人の体脂肪率は32パーセントで鍼治療をスタートしました。現在の体脂肪率は24パーセントまで減少しました。ダイエットだけが目的ではなく、余分な脂肪を落とすことも、鍼術は基礎代謝や血行を良くすることによって、体脂肪率の減少に有効です。


【症例8】 53才・女性
強い肩こり。主婦。生来、肩こり体質であったが、3年前から更年期障害と肩こり、首の後ろが異常に凝って気分がとっても悪い、首が廻らない、頭痛がして辛い。病院やあちこちの治療所へ行っても楽にならない。
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後頭部と肩の真上を触診すると、筋肉が硬く緊張して、パンパンに凝っている。肩の後ろ側のツボ、肩貞(けんてい)、臑兪(じゅう)、へい風(へいふう)、肩外兪(けんがいゆ)に0.18ミリの鍼を1.5センチ打つ。ツボの反応である硬結をゆっくり取り去る手法(5〜7ミリ鍼先を上下に動かす)テクニックを加えました。

次に、肩の真上の肩井(けんせい)、首の後ろの天柱(てんちゅう)に7ミリ打って、3ミリ鍼先を上下に動かすテクニックを行う。
さらに、背中全体の血流を良くする目的で、背中全体に接触鍼(皮膚に触れる程度の微妙な鍼術)を行いました。
最後に、手足のツボに3ミリ程度打って脈の力を出す本治療を行いました。
この方法を10回行う。肩の凝り、首の凝り、背中の凝りはすべて取れる。以来、肩、首の凝りやすい体質は完全に改善され、長年の凝りから解放されて大喜び。


強い肩こり症状の改善のポイントは、鍼を刺入して目的の深さで、鍼先の抵抗感や硬結を捉え、その硬結を徐々に取り去る手法(テクニック)を加える方法と皮膚の表面の毛細血流を改善する接触鍼の手法との組み合わせによる治療が大切となります。

それにより、深い筋肉層の血流と浅い皮膚の毛細血流の改善を行います。肩こり体質の根本から改善が可能になります。
これは、鍼術で深い所(奥深い)と浅い所(表面)の治療が出来る優れた点になります。


【症例9】 22才・女性
リューマチ症の初期。大学4年生。H12年3月に大学病院で検査の結果、リューマチと診断。症状は、右肩がズキズキ痛み、肘と手首が腫れ痛む。特に左手首の腫れと痛みが強くて、朝方と寝る前が苦痛。手首を返す動作が出来ない。
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脈を診ると、細く緊張している。この脈を柔らかく弾力性のある脈に改善するための鍼を手首のツボ、大陵と足のツボ、太白に3ミリ打つ。足の三里、手の曲池に5ミリ打つ。肩のツボ、肩井、肩貞、肩外愈に1センチ刺入して、鍼をゆっくり3ミリの幅で動かして、気血を流す手法を加える。この手法の目的は、消炎作用。手首の腫れを取るために、手首に鍼を刺さないで、皮膚に接触だけの接触鍼を行って、手首の炎症と腫れを取ります。
最後に、手首内側、外側、親指側に温かくなったら取ってしまう知熱灸で、腫れと炎症を取り去ります。

この患者さんは地方から来院するために、自宅で手首の痛みと腫れを消失することが出来るよう、知熱灸の指導をしてあげています。

このような治療を15回行う。手首、肘、肩の痛みや腫れが完全に取れる。生活障害は全くなくなり、健康と元気を取り戻した。

リューマチ症状は、炎症が身体に溜まりやすい。その炎症を取ってあげ、炎症の出にくい身体に治療してあげることが大事です。
リューマチ症状の初期であれば、必ず治ります。朝のこわばり感が出たら、その時期で治してしまうことです。


【症例10】 53才・女性
右手親指の関節の腫れ、痛み。公務員。7年前にひどいめまいと耳鳴り症状を見事に治したケース。今回は、右手の親指の付け根の関節が腫れ、固まって親指が開きづらくなり、パソコンでの仕事や家事が思うように出来ない。朝方は、手、肘、肩がこわばり動かない。病院の検査では決定的なリューマチ症とは病名が付けられないので様子を見ましょう、と言われてしまう。
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右手親指付け根の第一関節の手のひら側3ヶ所に、温かくなったら取り去ってしまう方法の知熱灸を行いました。この方法は、自宅で自分で出来る様に指導しました。この温灸と行うとポカポカと温かく、気持ちが良く関節の動きが楽になります。鍼治療は、太さ0.18ミリの鍼を5ミリ、肘のツボ、曲池から外関、合谷に打つ。肩の真ん中にある肩井に太さ0.20ミリの鍼を1センチ打って、そこで、ゆっくり鍼先を5ミリ上下に動かして、気血を流し硬い筋肉の緊張と取り去ってあげます。

この治療を行うと、腕全体が軽くなり、親指の腫れが徐々に消えて楽になるという。


14回で完全に腫れが引いて、指の動きが正常になる。その後、末梢循環のレベルアップを計りながら、リューマチ体質の改善を行っています。

【症例11】 32才・女性
顔面のアトピー性湿疹。主婦。23歳頃から顔に軽いアトピー性の湿疹が出はじめて、ストレスや過労が重なると痒みが強くなる。その度に、ステロイド軟膏を使用して痒みと発赤を押さえてきた。しかし、最近は顔の皮膚がカサカサと荒れて、顔の肌が厚く腫れ、黒ずみ、痒みが止まらなくなってしまった。
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頭の頂上にあるツボ、百会に鍼を1本打つ。百会(ひゃくえ)は、自律神経やストレス、イライラ、のぼせに効くツボです。
次に、足の三里、肘の曲池に太さ0.18ミリ鍼を7ミリ打つ。このツボは顔面の腫れや炎症に効くツボです。足のくるぶしの上にあるツボ、三陰交(さんいんこう)に深さ8ミリ入れて、その深さで3ミリ上下に動かして、のぼせの治療と女性ホルモンのバランスを整える。
背部は、首の後のツボ、天柱(てんちゅう)、風池(ふうち)に0.18ミリの鍼を8ミリ入れて、直ちに鍼を抜き去る術を行いました。この術は、首の凝りや顔面の痒み、炎症に効果があります。

さらに、アトピー体質に効果のあるツボは、背中の肩甲骨の内側にある、膏肓(こうこう)です。このツボに7ミリ打つ。膏肓は、肺の気が強化され、皮膚呼吸や皮膚の活性化や皮膚の艶を良くする働きがあるツボです。

このケースは、治療後、肌がスベスベになり、毎回の治療後にアトピー湿疹の改善が著明にあるケースです。
現在、16回目で完全に象の皮膚状態から改善して、肌はスベスベの張りのある肌になりました。

【症例12】 68才・男性
お尻の横の痛み。元航空パイロット。5年前に胃ガンの手術を行う。その後、体力が急速の衰え、お尻の筋肉も落ちたという。2ヶ月前より、立っていると左側の臀部の筋肉に鈍痛がして、長く立っているとシビレてしまう。
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左側の臀部を触診すると、筋肉に弾力性が無く、痩せて、ダブダブした組織です。漢方では、この力のない組織を肌肉(きにく)の虚(きょ)と呼びます。
これは、筋肉や組織に充分に血液や栄養が供給されていない証拠です。
内臓の消化器系である脾と胃の弱りが引き金となります。

お尻の外側にあるツボ、環跳(かんちょう)に太さ0.18ミリの鍼を7ミリ入れて、そこで、3ミリの幅でツボに刺激を与え、気血の流れを良くする方法を行いました。
さらにお尻の上、胞肓(ほうこう)、腰のツボ、志室(ししつ)に8ミリ鍼を打つ。その後、痛みの一番強い所に数ヶ所、知熱灸を行い、炎症を取り去る方法を行いました。

3回の治療で臀部の痛みは完治。その後、老化予防、不老長寿の生命力強化を行っています。
鍼灸は、痛みに有効ですが、本治法(内臓の根本治療、脈力強化を目的)によって老化予防に大変効果的です。
体力消耗、食欲不振、消化不良に有効なツボを選び、その人の身体に必要なツボを鍼灸で刺激すると、老化現象に力強い医学です。特に末梢循環を元気にしてあげることです。

【症例13】 28才・男性
ギックリ腰。会社員。ゴルフを行った翌日の朝、突然、左側の腰骨の付け根に激痛が走って、立っていると身体が沈み込むように、腰で体重が支えられない。会社で座っていられない程痛みが強い。
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左側の腰骨付近は、炎症でやや熱感があり、背中全体の筋肉が緊張して硬い。腰骨の最も高い所に0.18ミリの太さの鍼を3ミリ打つ。次に、そこから腰骨に沿って下に2センチの所に同じく3ミリ打つ。さらに腰骨に沿ってした2センチの所に3ミリ打つ。左右の腰骨の内側の炎症を取り去ることが目的の鍼術です。

その後、知熱灸を腰骨に沿って行い、深い所の炎症、冷え、筋肉の疲労を取り去る目的で行いました。さらに背中全体に筋肉の異常緊張を取る目的に、接触鍼を行いました。

この治療を3回行う。ギックリ腰の痛みは完全に取れて完治。次の日曜日にゴルフを開始する。
ギックリ腰は、急性の筋肉の炎症症状です。これにもレベルはありますが、軽い症状でしたら見事に治ってしまいます。

鍼灸術は急性の炎症に対して、微妙な深さの刺激と技術で筋肉や筋膜の炎症・表熱を取り去る技があります。


【症例14】 34才・男性
顔面神経麻痺。インターネット企業の日本支社代表。朝、起きて歯ブラシの後うがいをすると、口から水が漏れてしまう。さらに、左瞼(まぶた)が垂れ下がり、瞼が完全に閉じない。頬の筋肉がタブタブと緩み、笑うと口が斜めに歪んでしまう。
この症状が発生する3〜4日前に、首の後ろ、肩、腕の筋肉がパンパンに張って、凝った自覚症状が異常に強くあったという。
この1〜2年、会社立ち上げのため夜遅くまで激務が続いていた。病院でブロック注射、薬物療法を行ってみたが、なかなか改善しないので来院。
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左側の頬から口元の筋肉組織に触れると、弛緩してタブタブと弾力性がない筋肉となっている。この麻痺によるタブタブと弛緩した状態は、鍼灸医学では肌肉(きにく)の虚と言います。脾(ひ)と胃の気血の流れが低下して、顔面の筋肉に血液の供給不足による血行障害が原因していると考えられます。
治療:
口角の外のツボ地倉(ちそう)、鼻の外側のツボ迎香(げいこう)、こりょう、あごのツボ大迎(だいげい)、こめかみのツボ下関(げかん)、まゆ毛の外側のツボどうしりょう、客主人(きゃくしゅじん)に鍼の太さ0.18ミリの鍼を深さ3ミリで打つ。
この3ミリ打ったままで10分間、置鍼術。(一定時間鍼をツボに入れたままで置いて効果を出す方法)
この方法が力を発揮してくれる病態は、筋肉が弛緩しているとき、筋肉に力がない時、筋肉や肌肉、皮膚に力がなく冷えているときに有効な手法です。

10分経過したら、鍼をツボから抜き去り、そのツボに直ちに知熱灸を麻痺している口元、鼻の横、あご、こめかみ、まゆ毛の中央の上のツボに各2壮(2個)行う。
この顔面の皮膚は、敏感なために細心の注意と経験を必要とする鍼灸術です。
つまり、知熱灸に於いては、気持ちのよい熱が浸透したところで、直ちに取り去るタイミングが効果にさようするわけです。
知熱灸の効果は、この熱の『浸透力』のコントロールが大切になります。
この熱のコントロールは、沢山の経験で感覚的にマスターすることが大事です。
この熱の浸透力で、顔面の麻痺している局所の血流、毛細血管の血行がよくなり組織が再生する力を強化します。
知熱灸の熱の浸透力には、偉大な力があります。

顔面の治療を終えて、後頭部の天柱、風池、完骨のツボに鍼を打って、後頭部の血流を良くします。顔面と後頭部は、前後ですが相関関係があります。「椎骨動脈」の血流を良くすることが顔面の血流を良くします。

さらに、肘の外側、曲池、合谷治療を加え、足の先の親指の間にある肝経の太衝(たいしょう)、臨泣、陽綾泉、このツボは筋肉の凝りや麻痺に大変有効なツボです。

経過:
6回治療を行った段階で口元のゆがみが取れ、まぶたが閉じられるようになる。さらに12回目で笑うと口が斜めにゆがんでしまう表情が改善する。
18回目で顔面麻痺の状態は完治。笑っても素敵な笑い顔ができるようになり大喜び。
これで人に会ったり、会議で話すのが気持ちよく出来るという。

顔面麻痺(ベル麻痺)の発病初期ならば、鍼専門の鍼術で顔面のツボや全身の血流を改善すると見事に治ってしまうケースが数多くあります。


【症例15】 32才・女性
重症な肩こり・頭痛。OL。生来肩こり体質であった。半年前から急に午後になると偏頭痛がしだすようになった。1ヶ月前から病院に行って検査を行うが、特に脳には異常はない。飲み薬を服用してみたが、何かおかしいと思い来院する。
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最初に、指先で血流量を測定する「加速度脈波計」(APG-200)で、末梢循環のレベルを測定してみた。その結果、「B+X波形」と表示された。このBTX波形とは、若い人には良く現れるレベル評価で、一言で解説しますと「交感神経緊張状態」による血流障害です。

つまり、この人のケースは、常に交感神経が高ぶり状態になり、毛細血管は収縮して、筋肉の緊張、凝りが発生して、頭部の血行障害、後頭部、肩背部まで血流の低下を起こしたケースです。
治療目標は、このB+X波形を、鍼術で「B波」・「B+波」に改善すれば良いのです。このX(エックス)とは、交感神経の亢進を意味します。東洋医学的には「肺」(はい)の弱り、気血の不足、流れを意味します。

そこで、手首の脈診で脈を取りますと、脈診に於いても、右手、寸口(すんこう)示指の拍動が極めて弱く、細く、嗇(しょく)は、鮮明に拍動してない脈を、ハッキリとトントンと打つ脈に改善する事が目標です。

また、局所的には後頭部の筋肉の凝りを取り去ることが第一目標です。

治療:
最初に脈を元気にする鍼を手首の太淵、足の太白、足の太衡、足の三里、足の陽綾泉に鍼を打って全身治療を行います。

次に、背中、特に肩甲骨の内側から首の付け根全体が筋肉に弾力性を失って弱っている状態。これを鍼専門的には「陽虚(ようきょ)」、「気虚(ききょ)」、「肌肉の虚(きにくのきょ)」と言います。
この状態は、本来は筋肉に弾力性があり、元気な筋肉であったが血行不良が長く続いたために弛緩した弾力性のない筋肉組織になってしまった状態です。
これを改善する鍼術、接触鍼、円鍼、0.18ミリの鍼を5ミリ〜7ミリ打つ手法を行い、背中全体の末梢循環を良くする、陽気を充実させることです。
最後に首の後ろ、天柱、風池、完骨のツボに、0.18ミリの鍼を8ミリ程度打って、筋肉の凝りを取り去る。
経過:
1回目の治療で背中全体、腕の内側、お腹の皮膚の艶がよくなり、スベスベした肌になる。
3回目で肩甲骨内側、首の付け根の筋肉が弾力性のある力強い筋肉に改善する。
6回目で肩こりや肩全体の凝り感が消える。また、足の冷え性、便秘、お腹の張り感、むくみが取れて、以前より疲れにくくなり朝から身体が軽くなったと言う。

12回目、治療して1ヶ月経過を診た。
頭痛は全くない、最近は肌がスベスベして嬉しいと言う。完治する。
加速度脈波の評価も「B+」と理想的な血流レベルに改善し、スモールe、f、g波も完全に出現している。
また、脈診も陰脈・陽脈が調和して、力強く和緩のある良い脈に改善している。

鍼治療法には、局所の痛みや症状を改善する目的の鍼術と、全身の血流を良くして、局所と全身が改善することを目的とする鍼術という2通りの手法・治療法があります。
このケースは全身の改善が有効でした。

【症例16】 32才・女性
下腹部痛。OL。2〜3年前より右下腹部の深い所に”差し込む痛み”が朝方にある。婦人科で定期的に検査を受けて診ても、特別な痛みの原因はわからないと言われてしまう。
生理痛は重い。軽い子宮内膜症がある。足のすね、足の裏がむくむ。お腹全体が常に張っている感じがある。今年の5月以後、頻繁に差し込み痛があるので来院。
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先ず、加速度脈波計で血流のレベルを測定すると「Dレベル」と評価が記録された。30歳前半では通常は「A」または「B+X」・「B+」が理想的です。しかし、このケースは「Dレベル」が記録された。

これは末梢循環が低下しており、身体の背中全体、腰、足の循環が低下していることを示す。専門的にはC点の数値が5〜15に入っていればよい。しかしこのケースはC点が40と低下している。現代医学的には、心臓に帰す血流が低下していることを示す。
東洋医学的には、「肝(かん)」と「脾(ひ)」と「心(しん)」が弱い状態を示す。さらに「腎(じん)」と「膀胱」が弱いことを示す。

そこで、お腹を触診(軽く指先で押して、痛み、弾力、硬結、虚実を診る)すると、全体に硬く張っていて、少し押すと圧痛(押しての痛み)を訴える。(特に腹結、大巨)
東洋医学的には、ヘソの周囲に圧痛や硬結は、「(おけつ)」と呼び、血液の滞りを意味します。

さらに、うつぶせになり、腰のウエストの一番細いライン上に「腎兪」「志室」「痞根(ひこん)」、半身で横になると第十二肋骨に触れる、その下線にツボがある。
つまり、腰のウエストを中心に異常に筋肉が硬く、強く押すと飛び上がるほどに痛いという。

現代医学の検査では、全く異常がない。しかし、私の22年間の臨床経験では直感的に「ここが悪い!」、この腰の血流を良くすれば”差し込み痛”は改善すると強く思った。
さらに手首の脈を診ると、細く緊張して沈み、鮮明に拍動を感じない脈。
治療:
足の太白、手の太綾、足の大衡のツボに銀鍼を3〜5ミリ入れ、ゆっくり鍼先を押しつけ、ゆっくりひねりを加える手法。
さらに、陰陵泉、三陰交、血海のツボに打つ。そして、お腹に銀鍼を接触する程度の接触鍼で痛みを散らす鍼術を行う。うつぶせにして、腰から背中全体に、「金の円鍼」を行って、腰がポカポカと温かくなる様に「陽気」を増す鍼術を行う。さらに今度は銀鍼の「接触鍼」で腰の血流を良くします。治療目的は「冷え」を取り除いて血流を良くすること。

鍼術を終えて直ちに腰骨の中心部にある「陽関」「命門(めいもん)」、大腸兪、腎兪、志室、痞根のツボに「知熱灸」を温かくなったら取り去ってしまう方法で、1ヶ所に2壮(2個)行った。
患者さんは治療を終えて帰るときは、足先から腰の芯がポカポカして気持ちよく、”熟睡できて嬉しい”と治療の度に言う。
経過:
1週間に2回、計8回行った。1ヶ月の間に2度程度軽い痛みががあったが、全く不安はないと言う。その後、16回経過して完治。生理痛は軽くなり、むくみ、疲れやすかったのが疲れにくくなったという。

【症例17】 31才・女性
足の爪をはがしての痛み。作家、渡辺葉さん。ニューヨーク在住。舞台稽古の最中に左足の親指の爪をはがしてしまった。
爪の付け根がズキズキとした痛みが止まらず、外科に行って手当を行うが、稽古は思うように出来ない。そこでニューヨークから東京にいる母、一枝さんに連絡を入れるち、すぐ「知熱灸」をするよう指示を受ける。
葉さんは日本の大学在学中に当院の脈診流の鍼術を定期的に受けて、鍼灸の効果や知熱灸のやり方を良く理解していた。
→→
そこで、左親指の爪の付け根の角に、よもぎから作られる”もぐさ”を高さ7ミリの底面5ミリの円錐形に作り、1ヶ所に5壮(5個)、左右で10個「知熱灸」を行った。

爪の付け根の内側に、隠白(いんぱく)というツボ、外側に大敦(たいとん)というツボがあります。
このツボは鍼専門的には、井木穴の共通の特徴として、救急法に用いて速効を現すツボです。
例えば、親指の付け根の痛み、親指の足底の痛み、靴やヒールを長く履くと親指が痛む症状に良く効くツボです。このツボに「知熱灸」を行うと大変良く効きます。

葉さんは「知熱灸」を朝と夕1日2回1週間行った。その結果激しい拍動痛(心臓が拍動するように)ズキン・ズキンとした痛みは完全に治り、爪の再生が早く回復して、舞台稽古が出来るようになりました。「知熱灸」で見事、足の指先の痛みが治りました、とメールが入った。

葉さんはニューヨークの友人に、自分で手軽に出来る「知熱灸」を教えたり、自ら実践して健康法にしている。
また、一枝さんはチベットに行く度に膝が痛い人、足の痛い人、肩こりの人、腰痛の人にお教えして、大変喜ばれているという。
ご自身も「知熱灸」を20年以上、足の裏に行って実践している。知熱灸の生命は、気持ちの良い熱の浸透力です。ゆっくり、身体の芯に浸透する熱の力が炎症を取ったり、血流を良くする効果があります。鍼灸術との上手なつき合い方を身につければ、より健康的になります。

英語では、お灸、温灸を[moxiboustion](heat treatment by buring herbs)と言います。

【症例18】 36才・男性
首の付け根の痛み。プロゴルファー。
この1年間、首の付け根から背中にかけての痛み。ゴルフのスイングの時に「テークバック」から「インパクト」に入るとき、首の付け根に痛みが出て力強いスイングは出来ないので悩んでいる。
また、3週間後の大切なトーナメント大会にどうしても出場して上位を目指したいと訴える。
→→
うつぶせで首の付け根(第7頸椎)から肩先までの筋肉に触れると、正常に弾力性があり、筋肉や皮膚に張りと力がある。
しかし、このケースは頸の根本から肩先まで筋肉は弛緩して、弾力性が極めてない。首の付け根と肩がタブタブと力のない組織になっている。

鍼灸医学ではこの状態を「肌肉(きにく)」の虚と言います。
この虚(きょ)、機能の低下、血行不良の反対の状態が実(じつ)で、筋肉はパンパンに張って凝っている状態です。
このように筋肉が異常に力のない状態になると”首を支える力”が弱くなり、首の付け根に炎症(痛み)が発生しやすくなります。
治療:
最初に、首の付け根から肩先まで接触鍼で筋肉の”表面”に力を与え、血流を良くする手法を加えます。
鍼専門的には、鍼を刺さないで、皮膚に刺激・気を与えるを、「陽気」を補うと言います。

第二段階で、首の付け根大椎、大杼(だいじょ)、肩の肩中兪、肩外兪、秉風(へいふう)、臑兪(じゅゆ)のツボに、0.18ミリの太さの鍼を5ミリ打って、10分間、置鍼術を行いました。

第三段階で、円鍼でもう一度、皮膚の血流を良くする、陽気を充実させる手法を与えます。この手法の目的は、鍼専門的には陽気を陰気に「もたらす」ことです。
浅い筋肉層と深い筋肉層の調和が目標です。

第四段階で、先に述べた首、肩のツボに知熱灸を施して、筋肉に弾力性、元気を与える手法を行いました。
また、上半身の疾患は、下半身の足の土踏まずが原因していることが多く考えられます。土踏ますの「総健点」に知熱灸をご自身でも行っていただきました。
経過:
この治療を中心に8回行いました。力強くスイングしてもインパクトの時に痛みが出なくなる。16回目「首と背骨を軸」に腰が水平に回転でき、左腕、左側に「壁」ができるスイングになり、下半身と腰の回転でボールを運ぶことができる。
本来のスイングをイメージできると言って大会に挑む。結果は見事優勝。
日本女子オープンで優勝の経験を持つ、日蔭温子さんの治療を8年間行った中でヒントを得たことは、上半身を支えるのは、下半身のアキレス腱、土踏まず。親指の力などが力強いスイングに深く関係するということです。

プロスポーツ選手も鍼治療を多く活用しています。例えば、米国のタイガーウッズ選手なども鍼治療を受けて、身体のメンテナンスを行います。
勝つためには、セルフメディケーションと身体の手入れがポイントです。


【症例19】 42才・男性
右手首の痛み。米国インターネット企業、3ヶ月前よりキーボードを打つときに右手首の外側が痛み、思うようにキーボードが打てない。ゴルフの時に手首に力が入らない。米国ボストンより日本の脈診流の鍼治療を受けるために来日する。
米国で当院のホームページを見て、脈診の鍼術を知った。日本に8日間滞在している間に治して帰国したいと訴える。
→→
最初に手首の脈診を行った。脈は細く、緊張して、力の弱い鮮明に拍動感のない脈で、鍼専門的には嗇(しょく)脈と言います。
この脈は血流が弱く、炎症が取れにくい身体であることを示します。さらに、手首を触診すると、手首の外側の中央部がやや腫れて、筋肉に弾力性がなく、ブヨブヨとした組織になっている。

この組織の弛緩した状態は、鍼専門的には虚(きょ)の状態で、皮膚と筋肉の間の組織に「湿熱(しつねつ)」、水分代謝や血流の低下が原因して、手首に湿熱が”こもり”停滞して、痛みや炎症が取れない状態と考えます。
治療:
手首を返すと手首にしわができます。その真ん中に陽池(ようち)、そこより上指3本分の、外関(がいかん)、三陽絡、支正に0.18ミリの太さの鍼を5ミリ置鍼術(10分間鍼を打って置いたままの状態)。さらに、手首の内側の列欠、神門、魚際に鍼を3ミリの深さで打って、素早く抜いて熱を取り去る、炎症の消失を目的とする手法を加えます。

さらに手首の外側の中央に、鍼専門的には「三焦経(さんしょうけい)」という気血の流れる通路があります。
この経絡の気血(血流)の流れを良くする目的で円鍼(18金のまるい棒状の鍼)でマッサージをして、血流を良くする円鍼術を加える。

最後に、手首の最も痛みのある局所に「知熱灸」(温かくなったら取り去る手法)で、深い所の痛み、炎症を取り去る効果がある手法を用いる。
手首に10ヶ所(20個)
行いました。
経過:
米国に帰るまでの8日間、毎日治療を行う。3回目から手首を返したり、ひねったり、手のひらを強く突いても痛みがなくなり、7回目で手首の腫れや痛みは全くなくなる。この時点でゴルフを行ってみるが痛みはない。
最後の治療を終えて強く握手しながら「あなたの手はマジックハンドです。ありがとう」と言って帰国。
【症例20】 27才・女性
OL。めまい。会社で仕事をしていると急にめまいがして仕事に集中できない。駅の階段で重いカバンを持つだけでめまいがしてしまう。
自覚症状としては、めまいと夜、眠りが浅く不眠、頭重、肩から首の後、後頭部が異常に凝り辛い。
会社の近く病院、内科、心療内科に通ってみたが楽にならない。
→→
最初に加速度脈波計(APG)で指先にセンサーを当て、全身の末梢循環の状態を測定すると、A〜Gレベルの中で、この人のレベルはDレベルと記録された。
この人の年齢では、B〜Aレベルの血流が理想です。
つまり、末梢循環が極めて低下して、全身に充分血液が供給されていない状態を示します。
詳しくはC点、C波の値が-43である。理想は、C点、C波は-10から+5が目標です。
鍼術によって、-10〜+5まで血流を改善することが治療目標となります。
さらに、手首の脈診を行いますと、脈は細く、弱く、拍動が鮮明に触れない脈です。
この細く、弱い、拍動の脈を力強く元気な脈に改善することが治療目標です。
さらに、うつぶせになって頂き、首の後、後頭部に手で触診を行うと、筋肉は”鉄板のように”筋肉が硬く凝り、首全体が硬く”つまっている”状態の異常な首のこりです。
この首の後側の異常な筋肉の凝りが「首から脳」に充分血液が供給されないために、めまい、頭痛、不眠を訴えるケースが多くあります。
この首の後、後頭部の筋肉の凝りを取り去ってあげる事が治療目標です。
この人のケースの特徴は、首の後はパンパンに硬く、凝っている状態ですが・・・・・背中の後、肩甲骨から腰まで背中は、タブタブと弾力性のない筋肉、筋肉力がない状態です。
この筋肉に力が異常にない「弛緩・ゆるんだ状態」を鍼専門的には「肌肉の虚(きにくのきょ)」と言います。
身体は、長期的に背中の筋肉、背中の血流が低下して衰えると、首の後、後頭部で全身を支え、重心のバランスを取っているために、首の後の筋肉が硬く凝って、つまって、緊張してしまう理由です。

この状態を改善する治療目標は「背中の血流を良い状態に改善すること」と「首の後の凝りを取り去る」ことが大切な治療目標と考えます。
治療:
まず、手首のツボ「太淵(たいえん)」、足のツボ「太白(たいはく)」、足のツボ「太衡(たいしょう)」、足の「陽綾泉」、「臨泣」、腕の「外関」、「曲池」、「支正」のツボに0.18ミリの鍼を5ミリ打つ。
この手法は脈を元気に力強くする手法です。これによって筋肉の異常緊張が取れ、めまい体質を改善するベースの治療です。
次にうつぶせになり、背中から腰までの背中全体の血流をよくする手法、「接触鍼(せっしょくしん)」、「円鍼(えんしん)」の術、手法を行って背中に力を与えたり、血流をよくします。
この手法によって、食欲が出て、胃腸の働き、足のむくみ、足の冷え、腰の重い、背中のこりを改善します。
背中の血流がよくなり背中がポカポカと暖かくなると、夜、睡眠が深くなり、朝、身体が軽くなります。
次に後頭部、首の後の凝り、首の緊張を取り去る手法を行いました。
耳のうしろ側に「完骨(かんこつ)」、「風池(ふうち)」、「天柱(てんちゅう)」というツボが後頭部にあります。
このツボは、めまい、頭痛、不眠、顔面の痙攣、顔面の肌の艶、肌荒れによく効くツボです。
このツボに0.18ミリの鍼を5ミリ〜8ミリ程度入れて、筋肉の表面の凝りを取り去り、血流を改善しました。

この後頭部の凝りを改善するポイントは、徐々に芯の凝りを取り除くことです。芯の深い所の凝りを取り去る手法、技術が鍼術にはあります。
経過:
治療してから4回目に、めまいが抜ける様に軽くなって来ました!嬉しい!と言う。
6回目。仕事中や駅の階段で重い荷物を持っても、めまいがでなくなったと言う。
8回目。鍼治療を行った後、顔のむくみ、足のむくみが取れてスッキリする。不眠症が改善してよく眠れ、身体の重い感じが取れて、身体が軽くなったことが嬉しいと言う。
14回目。めまい、頭重、不眠、首の後の凝り状態が、全くなくなり楽になった。
この所、日曜日は毎週ごろごろ寝て過ごす日が多かった。
しかし、当院の脈診・鍼治療を受けて、日曜日も活動的に動けるようになった事が嬉しい!と言う。
現在は、週1回程度、若々しい身体と美しい身体のラインを作りに重点を置いて治療を進めている。
また、初診時の加速度脈波計(APG)での血流レベルの評価は、Dレベルのスタートでしたが、現在はAレベルに向上改善して、スモールe・f・gのウェーブを出現している。
この末梢循環が良好になると、疲れやすい身体が疲れにくい体質に改善します。さらに、婦人科疾患や足腰の冷え性も改善します。
鍼術の優れている点の中に、全身の血流をよくする手法、技術がある事があげられます。
【症例21】 55才・女性
慢性腰痛。座骨神経痛を伴う痛み。大手ジュエリー会社社長。
社長室でデスクに座って、20分程度すると腰骨からお尻にかけて痛みが発生して正しく座っていられなくつらい。
正座の姿勢にしたり、崩して横座りしたり、時にはあぐらをかいて座らないと腰からお尻にかけての痛みにで耐えられないと訴える。

また、最近、疲労感が強く疲れが抜けない。ハードスケジュールだからと自分に言い聞かせているものの、体が重く集中できない。めまい、頭痛が頻繁にある。
→→
最初に全身の血流状態を加速度脈波計で測定すると、Gレベル・G波形の血流で、A〜Gレベルの段階の評価でもっとも末梢循環が低下、衰えている状態を示している。

次に手首の脈診を行うと、脈は細く、緊張して拍動が弱く、鮮明に脈が取れない脈です。
脈診・鍼専門では左手首の腎(じん)、肝(かん)の脈が一番弱い脈です。
この腎と肝の脈が弱い時の身体は、腰やお尻、背中、足の衰えを意味します。この弱い脈を力強い脈に改善することが治療目標です。

さらに、腰を触診。(腰の状態を手で、筋肉の硬さ、腫れ、炎症、腰を支える力があるかないか診断する)
すると腰骨から腰の中心、ウエストラインまで、腰全体が「腫れて、肥大している」、この腫れて盛り上がっている状態が慢性的な腰痛の原因になっている・・・と説明する。
治療:

<手・足>
最初に、腎と肝の弱い脈を元気な力強い脈に改善するために手足のツボ、原穴に0.18ミリの鍼を3ミリ打ちました。この手法によって、身体全体の血流、内臓の働き、回復力、炎症、筋肉の疲労を取ることが目標です。
<腰>

<お尻>

<背中全体>

<脇腹>

<脇の下>
さらに、腰骨からお尻、背中全体の皮膚の表面の血流をよくして、筋膜の炎症、筋肉の腫れを取ることを目的に、接触鍼、円鍼術の手法で行いました。
このケースは、背中から腰までの全体の筋肉内の血流をよくして、筋肉の腫れ、炎症を取り去ることに最も治療のウエイトを置いて、この手法に30分以上治療を行う。
患者さんには、腰のこの腫れが消失、取り去ることができれば、必ず治ります!と説明する。
この腰から背中の腫れを消失させるために、繰り返し、繰り返しこの手法で腰の背中の血流を改善する。
<腰>

<腰横>

<お尻横>
そして最後に、腰骨の付近にある[腰眠]、[大腸兪]、[胞肓]、[環跳]、[志室]、[痞根]のツボに知熱灸を行った。このツボは腰の痛み、お尻の痛み、座骨神経痛に大変効果的な手法であり、ツボであります。
経過:

この手法を中心に8回行った。
長く座っても腰の痛みが以前より楽になってきた・・・という。国内でハードな仕事を無理できたことで、鍼の効果を実感できた、という。

この時点で秘書の方より、予約のスケジュールを2ヶ月間、毎日治療をして頂きたい、腰痛を完全に治したいと積極的な依頼を受けた。
14回目、腰の腫れが消失して、ウエストラインが細く締まってきた。
また、初診時の首から肩にかけての”筋肉がパンパンに硬くつまっていた首こり、肩こり”が改善して、柔らかく弾力性のある首、肩に改善した。
28回目、受付で腰の痛みが楽になったことが一番ありがたいですが、体重が4kg減少した、腰まわり、背中、脇腹、脇の下の脂肪が落ちたという。
36回目、1日中会議で座っていても、腰の痛み、座骨神経痛は全く出ず、完治する。2年間休んでいたゴルフを開始する。

現在は、健康法として、若々しい身体を保つために身体のお手入れを目的に鍼術を受けている。

この患者さんは、海外に宝石の買い付けに行った際、インド伝承医学(アーユルベーダ)でも”脈診”診断が基準になっていることを海外で知った・・・と言う。

●素晴らしい出会い●

実はこのケースと同じような腰痛症状で、歌手・ペギー葉山さんのケースがある。

今から20年以上前に、ペギー葉山さんは重症な椎間板ヘルニアの腰椎症になった。
当時の症状は、ペギーさんいわく「前から見ると憂鬱なタヌキ、後ろ姿は悲しきゴリラのごとき格格」で、重症の椎間板ヘルニアの痛みと日夜戦っていた。
病院に行けば、即手術、3ヶ月の静養とスケジュール調整もつかぬまま、痛み止めの薬を飲むうちに大切な声帯に異常をきたしてしまう始末。

そんな時に出会ったのが、脈診・鍼治療。初めは、半信半疑で50回通ううちに見事に完治。(脈力気力健康全書より)

それ以来、「私は脈診・鍼治療に絶大なる信頼を寄せている」と言う。
この24年間に渡り、ペギー葉山さんの治療と健康を担当するなかで、時には「ヘルペス・帯状疱疹(ほうしん)」を鍼術で治したり、ギックリ腰を治したり、声帯を痛めた時もその都度当院で鍼術を行ってきた。

身体は楽器です。身体のコンディションと声は深く関係するという。

(83歳まで舞台に立って歌い続けました。お見事。)


【症例22】 44才・女性
慢性便秘症状。低血圧。疲れやすい。スタミナがない。主婦。
20年以上も慢性の便秘症で、毎日便秘薬を飲まないとお通じ(排便)がない。
最近、薬の量がだんだん増えてきて不安になって来院。
また、若い時から元気で疲れを知らない程動け、活動的な生活を送ってこられた。
しかし、この2〜3年前より、午後になると身体がだるくなり、動かない。スタミナが急になくなったことを強く感じる。
さらに、頭重、不眠、後頭部のこり、背中がだるくなる。
特に”腰の中心の芯”が重く、腰からお尻にかけて一枚ナマリの板でも入っているように重だるい症状が辛いと訴える。
また、お腹に力が入らない。お腹がタブタブとした感じがして、気持ちが悪い。
大学病院でバリュームを飲んだり、腸の検査を行っても、「腸には特別に異常がありません」と言われ、便秘薬を飲み続けてきたという。
→→
先ず、全身の末梢循環の血流状を加速度脈波計(APG)で測定すると、心拍数は62回と遅い。ゆっくりとした拍動。
この62回は、東洋医学、脈診・鍼専門では、「遅脈(ちみゃく)」と言います。
この遅脈、脈が遅い脈は「全身に冷え」が入っていると考えます。
身体の”冷え”を取り除くことが治療目標となります。
さらに、気血の流れが衰えている状態です。脈診・鍼専門では、皮膚の表面の弱り、「陽気の不足」と考えます。
この冷えが原因して発生する便秘を「冷秘(れいひ)」とも呼びます。

次に、加速度脈波計の波形の解析を行いますと、このケースはB波・B点の数値が+47です。理想は+60です。つまり、−13、心臓から締り出す力、圧力が不足していることを示します。
これは、現代医学に於ける心臓からの駆出力(Systolic Pressure)ですが、東洋医学的には、このB波・B点の数値は何を示すのかを解説しますと、腎(じん)と膀胱の気血の流れに相当します。

従って、脈診・鍼専門では、「腎陽虚(じんようきょ)」を高める治療を行うわけです。
このケースにはこの手法が必要と考えます。
次にC波・C点の数値は、−21です。さらに、D波・D点の数値も−21と同じ数値を記録しました。
治療効果を上げるためには、−10〜−20の差が必要となります。
この現象を解説しますと、現代医学的には「血管壁の反射」が少ないことを示します。つまり、血管が収縮と拡張を力強く行っていない、弱い拍動をしているわけです。
この弱い拍動を力強い拍動の血流に改善することが治療目標となります。
この血管の拍動が強くなり血流が良くなると、小腸の働き、大腸の働き「ぜん動運動」が活発になり、便秘体質の改善になります。
また、小腸、大腸の働きが活発になると、スタミナのある身体に改善します。

東洋医学、脈診・鍼専門では、肝(かん)、脾(ひ)、心(しん)と肺(はい)、大腸の機能を示します。
従ってこの機能、働きを高める、気血を流すことが鍼術の治療と改善目標となります。
さらに、お腹、腹診(お腹の力、お腹の皮膚の艶(つや)、弾力性を診断)と行いますと、特に下腹部のおヘソの下の弾力性、力が弱い状態です。
このおヘソの下側「丹田(たんでん)」の衰えは、腸の働きを現し、生命力、回復力を現します。鍼術によって、お腹に与える、活発なお腹に改善することが治療目標と考えます。
治療:
この患者さんのケースは、長年にわたり飲み続けました。
その結果、自分の力で自然に排便を行うのではなく、お薬によっての強制的な排便を長年行ったことにより、体力も落ちて損傷したケースと考えます。

漢方的には「気虚」、「血虚」による便秘で、伝導無力となり、腸に元気のない状態です。
<手首・足首>
手足のツボ、生命力、回復力の強化に強く関係するツボ[原穴]を選択します。
手首の[太淵]、足の[太白]、足の[太衝]に、銀鍼の0.18ミリ3ミリ、脈を力強い脈にする手法。
<膝>
次に、足首の上[三陰交][陰陵泉][地機]、膝の[足三里][陽陵泉]は、便秘や身体を元気にするツボです。

次に、手の[陽池]、[合谷]、肘の[曲池]に鍼術を行います。
<お腹>
さらに、お腹の下腹部[関元]、おヘソの横[天枢][腹結][大巨]、おヘソの上[]5ミリの鍼術を行いました。このツボは、小腸、大腸の働きを活発にする効果があります。
<背中・腰>
さらに、うつ伏せになり、背中から腰までの血流を改善する「円鍼(えんしん)」、「接触鍼(せっしょくしん)」を行う。
一般的に、便秘はお腹の症状ですが、実はお腹の反対側である「腰」「お尻」の部分の血流が深く関係しており、大切な治療のポイントです。

患者さんは、背中全体から腰まで、「円鍼」(24金製のまるい棒状の鍼)で皮膚の表面を摩擦マッサージして、血行、血流を良くする手法を行うと、手足の先までポカポカと温かくなり、腰の芯が軽くなって気持ちがよい!!と、治療の際に言う。
この金の円鍼の手法を行うと、背中全体から腰の部分まで「薄い桃色」、「淡いピンク色」に皮膚の色は変化する。
この色に肌が変化することが効果であり、毛細血管が活発になり、「活動毛細血管」に変化しる証(あかし)です。
この繰り返しで毛細血管が改善します。
経過:

2回目、治療を終えて帰ると、お腹から腰がポカポカと暖かく、腸がゴロゴロと鳴り、お腹が気持ちいい、という。4回目、身体が軽くなり睡眠が深くなって、朝の食欲が出てきた。
毎日の便秘薬を半分に減らす。
8回目、お腹、腕、足、足のかかとの皮膚がスベスベな肌になってきた。「不思議!」と言う。また、治療前は腰からお尻の芯が重く、だるい感じが、今は全くなくなって身体が軽く、歩くテンポが早くなってきた。
18回目、なんと、この7日間は薬なしで快便です!と言う。
20年間も薬を使い続け、量もだんだん増え、もう一生薬なしでは無理だろうと思っていました、という。
また、最近、汗が出ないことが気になっていました。しかし、治療を受けてから、不思議と汗がよくでるようになって、お尿水の回数が多くなってきた、という。
24回目、午後になると出る、身体のだるさやスタミナがなくなる感じは、今は全くありません。元気です。
お腹がキューキューと引き締まった感じが気持ちよい。
さらに、背中に力が出て、背筋が伸びる感じで、背中の余分な肉が落ちたことも嬉しい・・・という。
疲れやすい、スタミナがなくなった、不眠、便秘などは年齢のせいだと思い、心の中では諦めていた。
しかも、治療の度に身体が変化する自分が嬉しく、自信になった!!と言う。
このケースは便秘薬を長期間服用して、体力が低下したケースで、漢方的には「虚証の便秘」であり、弛緩性の便秘と考えます。

鍼術で皮膚の血流を活発にしたり、お腹や腰の血流を良くして、腸の
「ぜん動運動」を活発に改善することにより、腸の働きは元気になり便秘体質は改善します。
東洋医学では、皮膚(肌)と腸は相関性があると考えます。
つまり、肌がスベスベと潤沢した艶と活気のある肌になると、腸の働きも活発になるわけです。さらに疲れにくい体質に改善することになります。


【症例23】 38才・男性
背中の痛み。強い背中のこり。不眠。自営業。
1ヶ月前より、背中全体の筋肉が「締めつけられる様に激しく痛む」。
寝ようとしてもキンキンと目がさえて寝付けない。背中全体が痛み、筋肉が硬く凝って、常に重く、圧迫感と締めつけられる痛みが苦しい。楽になりたいと訴え来院。
→→
最初に、全身の血流状態を測定するために、加速度脈波計(APG)で指先にセンサーを当て測定する。 その結果、心拍数は98回、安静時での理想は70回前後です。
心拍数が早いということは、自律神経が亢進(こうしん)し、高ぶっていることと関係します。
そして、血流の脈波は、B+X波形と記録された。詳しくはB波・B点の数値が+81である。この81の数値を鍼治療で+60までにコントロールすることが治療改善目標となります。
この改善によって「血管の異常な拡張性」が改善され、血流が理想的になり痛みの消失効果になると考えます。
また、自律神経からの異常な筋肉のこりを改善することになります。
次に、手首の拍動を診る、脈診を行うと、脈は細く、硬く、緊張した脈です。
脈診・鍼専門では、この緊脈(きんみゃく)は、痛みの時に多く触れる脈状です。
鍼術で、この異常に緊張した脈状を「柔らかく・弾力性のある良い脈」に改善することが「痛み」を取り去る治療目標です。
さらに、背中の触診(手のひらで筋肉の緊張、異常な硬さ、こり、肌の艶(つや)ハリなどを診る)を行う。

すると、「びっくりする程に筋肉が硬く異常に緊張した背中」である。
この硬く、緊張した状態の背中が「背中全体が痛く、締めつけられる痛み」の原因、引き金になっていると考えます。
この背中のこり、筋肉が硬くつまった状態を取り去ってあげれば「痛み」「鈍痛(鈍い痛み・鈍重な痛み)」から解放してあげられると強く思った。
この強い背中のこりを取り去ることが最大のポイントとなります。
治療:

<首>

<肩>

<背中>

<腰>
最初に背中全体の筋肉の異常な凝り、緊張を取り去る目的で、
首の後の[天柱]、[風池]。 肩の[肩井]、[肩外兪]、[背中兪]、

背中の[肺兪]、[心兪]、[膈兪(かくゆ)]、[肝兪]、[胆兪]、[三焦兪]、[腎兪]、[大腸兪]と、首から肩、背中全体、腰までのツボに、0.18ミリの太さの鍼を5ミリ程度打って、置鍼術(鍼を一定時間ツボに入れたまま置いて効果をあげる手法です。)

この置鍼術(ちしんじゅつ)によって効果をあげるポイントは「鍼の深さ」の調整、コントロールが効果に大きく作用します。
このケースは、自律神経の異常な緊張と背中の筋肉が「硬い板、硬い鉄板の様に凝っている状態」です。
この状態を改善する手法は、強い刺激を深く与えても筋肉の凝り、固く緊張している状態は改善しにくいです。
それよりも、「浅い筋肉組織」を、先ず、柔らかい筋肉に改善して、クッション、弾力性のある良い筋肉に「毛細血管」の血流を改善します。

次にさらに深い組織の筋肉の凝りを取り去ります。
鍼術の優れている点に、ツボを刺激する中で「浅い所の筋肉組織」と「深い所の筋肉組織」を鍼の深さで微妙に調整・コントロール出来る点があり、鍼術の効果があります。また、自律神経により効果的です。
<腕>
<手首>
さらに、背中のこりは、腕のツボで背中、首のこりと深く関係します。
腕の外側にある[外関]、[三陽絡]、[陽池]、[支正]、[後谿]のツボです。
<肩>
<背中>
<腰>
最後に、もう一度背中全体の血流を良くすることを目的に、皮膚(肌)の表面の毛細血管の血流を高める効果がある「円鍼術」を行い、背中全体を「面(めん)」で筋肉のこりを取ります。
経過:
1回目、治療を終えて帰るとき、背中がポカポカ温かくなり、背中の芯の痛みが軽くなっています。今夜はいくらか眠れそう、楽になりたい、という。
3回目、首の後、背中の痛み、特に重く締めつけられるような鈍い痛みが取れてきました。さらに、夜、寝ようとしてもキンキンと目が冴えて眠れない状態が「楽になってきました」という。
5回目、背中の痛みが消えて、背中に厚い板が入っているような感じがなくなり、背筋が伸びて、背中を前に曲げたり、後に反らす動作が楽になった。
また、鍼治療を受けてから、背中のこりが楽になり食欲が出て、気力と集中力も出てきた。特に首の後の凝りが取れてきたら、目の疲れを感じなくなってきた、という。
最初の時のB+Xが、この時点でB波形に血流が良くなった。
7回目、後頭部の硬い凝り、背中の痛みは完全になくなりました。
また、首が廻りにくい感じ、後方に向くと首の芯に痛みがあったのも今は楽になりました。痛みから解放されました。
この患者は、「血流がこんなにも大切とは思いませんでした」と言う。
筋肉の中に「筋繊維」があります。その血流を良くすることが大事なポイントです。

●心に残る背中の痛みのケース●

この背中の痛みのケースで、同じ様な症状で来院して治った事例が多くあります。

その中で、写真家・水中カメラマンの中村征夫さんのケースです。
中村さんのケースは、大変重症でして、診察ベッドで寝返りが出来ない程に激しい痛みが背中の芯に走るケースでした。

本人は「動作すると、背中全体に激しい痛みと締めつけられるような鈍い痛みで仕事が出来ません・・・」
3ヶ月間の水中写真、講演etc.の仕事を全てキャンセルしています。
この背中の痛みを治して頂きたいと言って来院しました。

脈診と背中を診ますと、背中の筋肉は「異常に硬く、緊張して、筋肉に弾力性が失われている状態」でした。

私は、この硬い状態を例えると、「お肉を冷凍」すると、硬いお肉になってしまいます。その冷凍を「解凍」すると、柔らかく弾力性のあるお肉になりますね・・・。とたとえて説明しました。
これからの鍼治療は、冷凍状態から解凍して、柔らかくクッションのある弾力性のある筋肉繊維にお治療します、と言って治療を行いました。

脈診で脈の緊張をチェックして、その緊張した脈を柔らかい脈に改善しました。
そして、背中のこりを取り去る手法、置鍼(ちしん)、接触鍼、円鍼、知熱灸を行いました。
繰り返し、繰り返し、背中の血流を改善して、治療の度に痛みが消失して、2ヶ月後に完治しました。

現在は、精力的に活動しています。


【症例24】 29才・女性
耳鳴りと難聴。自営業の事務手伝い。2週間前に突然、耳鳴りがキーンとしたり、ジーンとする。また、右耳の聴力が低下して音が聞こえにくい、二重に重なるように音がすると訴える。
耳鼻咽喉科で診てもらうと、突発性難聴と診断する。薬物と安静で経過を診ます、ストレスを少なくしてください、と言われ、安静にしているが不安になり、鍼で治療してくださいと来院する。
→→
今年の2月から4月頃まで、ひどい花粉症になり、強く鼻をかみ、くしゃみを多かった。さらに、風邪を引いて高熱が出ても会社に出勤して無理をしていた。肩から首にかけて筋肉がこり、耳の後に重圧感がある。
肩から背中がこり、身体がだるく、睡眠が浅い。
治療:
最初に、手首の脈を取り脈診を行うと、脈は異常に細く、弱い脈。拍動が鮮明に触れない脈です。さらに、脈診・鍼専門では、五臓六腑の弱り、バランスを診ます。すると、左手の「腎(じん)」の診所が最も弱い脈です。

東洋医学では、「耳は腎の外竅(がいきょう)」と言います。

耳の病い、耳の症状は、「腎」の弱り、衰えが深く関係すると考えます。
従って、この腎(じん)の弱い脈を鍼術で力強い元気な脈に改善して、「腎」の働きを高めることが治療目標です。
その血流を良くすることが大事なポイントです。
次に、局所の耳の前のツボ、耳の下のツボ、耳の後にある耳の病、耳の症状に有効なツボを使用します。
<足>
足首の[復溜]、このツボは「腎経の虚証」に効果的です。
例えば、体重く、足腰冷え、微熱、物忘れ、耳鳴り、難聴、めまい、食欲不振、精力減退、手足のしびれ等の症状に有効なツボです。
このツボに0.18ミリの太さの鍼を5ミリ打って、20分間置いて、気血を流します。
<手>
[尺沢]、[孔最]、[曲池]、[温溜]に同様に行います。
また、耳の病によく効く[会宗]。
<耳>
耳の前[聴宮]、耳の下[天容]、耳の上[角孫]のツボに鍼術を行う。
耳の周囲に温かくなったら取り去ってしまう「知熱灸」を行って、「耳の内、耳の血流」を改善する目的に行う。
<首の後>
後頭部、首の後と「耳の病」は深く関係します。後頭部に鍼術を行い、耳の血流を改善しました。
経過:
初回の治療の最中に、40分過ごした時点で「先生、耳のキーンとする音が消えてきました!」、また「音が二重に反響するのが少なくなって来ました」という。
当院では、軽いバロック音楽を流しているので、患者さんはこの音楽を基準にしていた。
3回目、キーンとしたり、ジーンとする音が気にならなくなってきました。
耳鼻咽喉科のお年をめした先生に鍼治療を受けていると言うと、「続けなさい!聴力検査でも良くなっていますよ」と言われる。
この先生は、鍼治療をすすめて通いなさい、と力強く言って下さるという。
7回目、耳鳴りのキーンとする音はなくなり、聴力も回復する。
また、この患者さんは、治療を終える頃になると、「汗が首筋から背中にかけて出てきます」。鍼治療の効果に「水分代謝」の働きを高める効果があります。
このケースは東洋医学的には、過労、ストレス、睡眠不足で「腎(じん)」の衰えや「免疫力」の働きの低下により、耳鳴りと難聴が発生したケースと考えられます。

【症例25】 27才・女性
顔面の湿疹。かゆみ。発赤。甘い物を異常に食べたい。コンピュータ会社に勤務。
1年前より顔面の口のまわりに湿疹が現れ、赤く腫れ、かゆみの悩み。皮膚科で検査すると、アレルギー反応がある。ステロイド軟膏を口もとにすり込むが効果が出ない、不安になり来院する。
→→
最初に、顔面の湿疹状態をみると、口の横の角に赤く湿疹、さらに左側の頬に赤く肌荒れと湿疹、鼻の下、湿疹が著明にある。
東洋医学では、「口の周囲」に現れる湿疹は「胃熱(いねつ)」と考えます。
この考え方は漢方独自の考え方です。
漢方では、甘い食物を食べ過ぎたり、辛い食物を食べ過ぎる事により、胃中の熱が発生して、それが、顔面や口に胃熱の原因で湿疹が現れると考えます。
鍼治療で、この「胃熱」を取り去ることが、口の周囲に現れた湿疹を改善、治すことの治療目標となります。
治療:
この胃熱を取り去るためには、鍼専門では「足の胃経(いけい)」、「脾経(ひけい)」を用います。この気血の流れを良くすると「胃熱」が取れます。
<足>
足の[太白]、[地機]、[陰陵泉]、足の外側の[足三里]、[豊隆]のツボを用います。
このツボは、胃の働きを高める効果があり、顔面の湿疹、吹き出物、ニキビ、肌荒れに効果的なツボです。
「胃熱」が消失すると顔面の赤み、かゆみ、腫れに効果的です。
<手>
次に、腕のツボと顔面の湿疹は深い関係があります。
肘の外側にある[曲池]、[手の三里]、[合谷]、手首の[陽池]です。
このツボに0.18ミリの鍼を5ミリ程度打ちます。
<お腹>
さらに、お腹に治療を行います。お腹、胃腸の働きを高めると「顔面の湿疹」が改善します。赤みや腫れ、炎症が取れます。
おヘソの横[天枢]、おヘソの下[関元]、おヘソの上[]です。
この患者さんは、お腹が[虚満(きょまん)]といいまして、お腹がポンポンに張っている状態です。
この状態は、「胃腸や肝、胆が衰えて」いることを示しています。
このお腹を「引き締まったお腹」に改善することが治療目標です。
<顔>
さらに、顔面の湿疹の腫れ、赤み、かゆみを取り去る目的に、温かくなったら取り去る方法の「知熱灸」を局所の湿疹に直接行います。
この知熱灸で「肌の炎症」が消失する効果が期待できます。
大変効果的な手法です。
経過:
3回目から顔面の赤み、腫れが消失する。
また、甘い食物を食べ過ぎていた点を「先生から注意され、指導していただいたことを守っています」という。
8回目、口の周囲の湿疹が取れました。まだ、頬の赤みがわずかにありますが、嬉しい。毎日、鏡に向かうのが楽しみです、という。
このケースはアレルギー体質に、甘い食物を食べ過ぎて、胃腸の働きを低下させてしまった。それによって、漢方での「胃熱」が発生して、胃熱は口の湿疹として現れたものと考えられます。
”肌は内臓の鏡”とも言います。
胃腸の働きを高めると、スベスベとした艶のある肌に改善します。

【症例26】 26才・女性
首のつけ根の痛み。疲れが抜けない。大手外資系証券会社に勤務。2週間前から首のつけ根に痛み。
会社の近くのマッサージ・指圧院に飛び込んで治療を受けた。2〜3回受けてみたが、受けるときは気持ちよいが、その後、痛みが強くなって、また元に戻ってしまう。
この2〜3日、首を右側に傾けると、首のつけ根に強い痛みが走り、寝返りを打ったり、急に後方を向くと痛みが背中まで走ることが辛いと訴え来院。
→→
手首の脈を診ると、脈は沈み、弱く、細い、脈が取りにくい、鮮明に触れない、デリケートな脈です。
この「繊細な脈」は、脈診・鍼専門では「虚脈」であり、「虚証(きょしょう)」の体質と診断する。
この「脈が弱い人、脈が細い人」は刺激に対して、大変敏感であり、強い刺激に身体が反応する力が少ない、適応する力が不足している状態です。
この刺激量を専門的には「ドーゼ」と言います。
当院では、このドーゼの量を判定する方法として「脈を診ます」、「肌のキメの細かい人」は大変敏感であり、繊細な治療やバランスを取る治療で効果がよく出ます。
このケースも首の痛みで来院していますが、治療方法は「首の局所」「首の痛い所」だけの治療では、改善しにくいと診断しました。
治療:
うつ伏せになり、首から肩、背中の筋肉の状態を診断しますと、「肩の真上」の部分の筋肉は、異常に硬く、緊張している。しかし、「背中全体はタブタブと筋肉に力のない、弾力性の低下した筋肉」でした。
<背中>
最初に、一番弱っている背中全体の筋肉を元気な力強い状態に改善する目的で、背中全体に「接触鍼」「円鍼」の手法を行いました。
この手法は、鍼を肌に触れる程度で「血流」を良くする手法です。
この手法で「首を支える力、首の負担を少なくする」ことができます。
<肩>
次に、「肩の真上」、肩の最も高い所の筋肉の凝り、緊張を取り去ります。
0.18ミリの鍼を5ミリ〜8ミリ程度入れて、直ちに抜き去る手法「単刺鍼術」と言います。
この手法で「筋肉の表面の炎症」を消失させる効果があります。
<首>
次に、首の後、後頭部の筋肉の緊張を取ります。
この後頭部も大変敏感な所で、0.18ミリの鍼で3ミリ程度で炎症を取り去ります。
経過:
治療を終えて、首を右側に傾けても、強い痛みが出ない。また、背中全体がポカポカと温かくて気持ちよい、という。
この患者さんは、仕事の引き継ぎでこの1ヶ月間、無理を承知で「最後だから気力でがんばってしまった!」。
その疲れがなかなか抜けません。身体の芯のだるさも治したい。
5回目、首のつけ根の痛みは完全に治りました。
それと、身体の芯が軽くなり、気持ちが以前よりポジティブになりました、という。
私は、「脈が元気な脈になりますと、気持ちもポジティブになります」と話をしました。
また、「背中が元気になると、気持ちも元気になります」
このケースは、慢性的な過労により首を支える筋肉が弱り、首のつけ根に「炎症」が発生して「痛み」の原因、引き金になったと考えられます。
鍼術は「痛み」に有効ですが、慢性の疲労や「免疫力」の働きを高める効果もあります。

【症例27】 31才・女性
手のひらと足の裏、脇の下に異常に汗をかく。OL。顔には比較的汗は出ない。しかし、手のひらは緊張したり、初めて人に会ったり、仕事で集中したりすると、汗が流れるように出てきて、不快になる。
また、病院や数ヶ所の治療院に通ってみると、肩から背中の異常な筋肉のこりにびっくりされる程に強い肩こりがある。手のひらが異常に冷たくなる時や足の裏が冷えてつらい。
最近、手のひらの汗だけではなく、身体のどこかが悪いのではないかと思いはじめ来院する。
→→
最初に手のひらを見ると、手のひら全体に玉の汗が出て、汗が流れるほどの状態です。左右両手に出て、足の裏も汗でキラキラした状態になっている。
次に脈診を行うと、手首の脈は細く、拍動に力がない脈。脈診・鍼専門では「軟にして、
(しょく)脈」です。
次に、うつ伏せで肩の真上を触診すると、肩の真上の筋肉は「石に触れる様」に硬く、緊張した筋肉となっている。本人に、気になりませんか・・・と尋ねると、私は鈍感なのか?肩の強いこりに対しては平気なんです。美容室でも驚かれるが、無感覚でいられると言う。

私は直感的にこの肩から背中の「異常な筋肉のこりは、自律神経から来ており、この肩から背中全体のこりが手のひらの汗の原因」と深く関係していると強く感じた。
また、脈診・鍼専門では「皮膚の艶・ハリ」がない状態を「陽虚(ようきょ)」と言います。
この患者の肩から背中全体の肌は”陽虚”の状態です。この皮膚、肌の元気のない状態を改善することが治療目標と考えました。東洋医学的には、皮膚、肌の血流を良くすることは「陽虚」の改善です。これは、現代医学的には「自律神経と皮膚、肌」は関係しています。
自律神経疾患を改善するには、皮膚の血流を改善することが大切な治療ポイントと私は考えます。
治療:
手のひらに汗をかくからといって、手のひら局所の治療ではなく、肩から背中全体の治療を最優先しました。
<肩>

<背中>

<肩真上>

<肩の後方>
最初に、背中全体の血流をよくして、背中の筋肉のこり、皮膚の毛細血管の血流を「円鍼(えんしん)」の手法で改善します。
この手法を40分間行う。この手法で自律神経の機能を整えます。この手法は自律神経に大変有効です。
次に、肩の真上の異常なこりを取り去る手法として、0.18ミリの鍼を5ミリ打ちます。
この手法で「石の様に硬く、緊張した肩」の筋肉を少しずつ改善します。
経過:
治療を終えて自宅に帰る頃、背中から肩が楽になり、自分で肩に手を当ててみると、肩の強いこりが消えている。
3回目、緊張したり、人と初めて会っても手のひらに汗が出る不快感がなくなってきました、という。
6回目、不思議です。手足にあれほど汗をかいていた状態が改善した。仕事で集中しても汗が出なくなった。手のひら、足の裏の冷えがなくなり、気持ちがいい、という。また、このケースは腕から肩、背中から腰、足までの肌がスベスベと艶のある肌に改善した。

自律神経のアンバランスによる発汗異常は、肩や背中の血行障害や皮膚の毛細血管の血流低下が引き金になっているケースがあります。
鍼術で皮膚表面の毛細血管の血流を改善すると、自律神経のアンバランスに有効です。

【症例28】 33才・女性
生理の前後の体調不良。OL。月経開始の数日前から下腹部が不快になり、足腰が異常に冷え、軽いめまい、足のむくみが強くなり食欲が落ちてしまう。生理が終わった後2〜3日は身体が重く、身体がなんとなくむくみボテッとした感じになる。仕事中も思考力が低下してしまう。生理の後は仕方がないと思いこんでいた。最近、特につらいので探して来院。
→→
最初に足の向こうずねの内側に触れる。この足首から膝の内側までの部分に「血虚(けつきょ)」と言って血の不足している状態が現れます。
 
漢方的には生理の前後は「血の不足」と考えます。この血の不足になると足首の上から膝の内側までの皮膚の組織の弾力性が衰えて、タブタブとした弛緩した状態になります。(このケースでは、生理の前後は足がむくみ、足が水っぽくなってしまう・・・という)
鍼専門では、足首の内くるぶしの上、約4本分の所に「三陰交(さんいんこう)」と言うツボがあります。
このツボは「婦人の三里」ととも敬称されている大切な穴です。
さらに、専門的には、このツボには「脾経(ひけい)」、「肝経(かんけい)」、「腎経(じんけい)」の3経がここに会するところからこの名があります。従って、足が冷えて頭に血がのぼる人、生理不順の人、生理が重い人、生理によって足がむくむ人などの症状に使用して効果的なツボです。
また、足首の上の三陰交と膝の下にある「陰陵泉(いんりょうせん)」のツボを組み合わせることにより、より効果的になります。
(このケースには20分間置鍼術を行いました)
次に生理によって「血虚」、「血の不足」になると、お腹の下腹部やお腹全体の皮膚、肌の艶、ハリが失われ、微妙に肌荒れが現れます。
このお腹全体の気血(きけつ)の流れを鍼術でよくします。お腹の正中線上を流れている「経絡」を「任脈(にんみゃく)」と言います。この任脈の任は、妊娠の意味で、男女生殖器機能と密接な関係にある経脈です。従って、生理不順、生理が重い人、足腰の冷えが強い人、婦人病にこの任脈上のツボ、「関元」、「気海」、「水分」、「」のツボを用います。
(このケースも接触鍼と0.18ミリの鍼を5ミリ程度打って、任脈を元気にしてお腹を温める効果が目的です)
次に、腰のベルトのラインから腰骨あたりまで、冷えたり、腰の芯に鈍い痛み、ひきつれが生理の前後に現れるケースがあります。生理の時は腰の仙骨部から腰骨にかけての冷えや鈍重感が強くなります。
ツボ名では「陽関(ようかん)」、「命門(めいもん)」のツボは、「血の道」、「出血」に有効です。
(このケースには、腰全体に接触鍼を行い、その後に円鍼術を行い、さらに、腰を温める血行をよくする手法として知熱灸を行いました)
経過:
この様に足首、膝、お腹、腰、背中全体の気血を流して、身体の芯が温かくなる効果を目的に鍼術を行った結果、足腰の冷えや下腹部の不快感、足のむくみ、食欲不振、仕事中の思考力の低下などの症状が改善されました。
このケースは、生理の前後に手首の脈が「力の弱い脈、空洞でうつろな脈」となる特徴があるケースでした。
この病脈を力強く、元気な脈に改善しました。脈診の専門的には「腎(じん)」、「肝(かん)」、「脾(ひ)」を力強い脈に改善しました。

この患者さんには、生理前後の体調不良は「生理疲れ」があります、と私は説明しました。「生理疲れ」を取って血液の流れを良くしておくと、次の生理が軽くなり、”生理疲れしにくい体質”になります、と説明した。
●神秘なる女性ホルモン●
「卵胞ホルモン(エストロゲン)」と「黄体ホルモン(プロゲステロン)」という2種類の女性ホルモンを分泌、妊娠のもととなる卵子を育てる器官が神秘なる卵巣です。脳の視床下部と下垂体の命令によって、卵子は卵胞とともに成熟、毎月1回1つずつ排卵が起きる。
女性ホルモンの働きで子宮内膜が受精に備え、受精しないと黄体ホルモンの分泌が止まって月経が起こる。身体の偉大なる生命のメカニズムです。

この女性ホルモンの分泌と東洋医学に於ける「肝経」、「腎経」、「脾経」は、深い関係があります。
脈診・鍼専門では、この経絡上のツボや気血を流したり、手足や腰の血行循環をよくして女性ホルモンの分泌の働きを高めることが可能です。

【症例29】 48才・男性
緊張型頭痛、めまい、目の奥の痛み、集中力の低下。航空パイロット。

慢性的な緊張型頭痛で病院のお薬やブロック療法を2〜3年行った。今回、当院の鍼治療を受けることになった理由は、5月より機長に昇格するためにシミュレータ機に入り10回テストを行い、最後に運輸省の試験官がチェックして副機長から機長に昇格する重要なテストがある。

しかし、めまいの症状、緊張型頭痛と頭重、後頭部の凝り感、側頭部のこめかみから額、眉に鈍い痛みと熱くなるような感じがつらい。また、多くの計器を見ていると目の奥が痛くなる症状。
さらに、今回の試験の為の猛勉強をすると、疲れやすく、集中できない・・・!なんとかこの症状が楽になりたい。気力と集中力を高めて試験に合格したい・・・と訴える。
→→
最初に全身の末梢循環の状態を加速度脈波計(APG)で血流レベルを測定すると、Dレベルの血流で末梢循環が極めて低下している状態です。

初診時のデーターは、心拍数が55回/minと遅い脈、B波の数値は、+60、C波の数値が−36です。この−36は、理想的には−5〜−15です。鍼治療で−5〜−15まで改善することが治療効果、目標です・・・と説明しました。
また、C波の数値が−36に対して、D波の数値も同じく−36であった。このC波とD波の数値が同じであるということは、反射がない。つまり、動脈から静脈、毛細血管と血流の流れる圧力が極めて弱いという事を意味します。

この結果、D波以後の毛細血流を現すe、f、g波のウェーブが出現しない理由です。従って、皮膚の表面に流れる末梢循環も極めて低下している状態です。このe、f、g波が出現する鍼治療を行う事が症状を改善するために重要な治療法です・・・と説明しました。

そこで、東洋医学独自の脈診の診断では、この状態の時に、どのような脈であるのか説明しますと、脈の中心である中脈は、力の弱い虚脈で、陰脈、陽脈とも力の衰えた虚脈です。脈診・鍼専門的には、沈にして、軟脈でしょく脈でした。
患者さんには、この拍動の弱い脈を力強く、鮮明に拍動する元気な脈に鍼治療で改善しましょう・・・!と伝える。
治療:
手首の[太淵]、足の[太白]のツボ、足の[太衝]のツボに0.18ミリの鍼を5ミリ刺入して呼吸が深くなる効果、肩から胸の緊張を取り除く目的、頭痛、頭重、めまいに効果のある鍼治療を行う。
さらに、足の[三里]、肘の[曲池]、手首の[陽池]に5ミリ打って、目の疲れ、目の奥の痛みに有効な鍼治療を行う。また、この手法は脈を元気な力強い拍動にする効果が目的です。
   

<お腹>
次に、お腹の下腹部、丹田(たんでん)に力を注ぐ、お腹に元気をもたらすために、[関元]、[天枢]、食欲と身体の元気を増すために鍼治療を行う。
<肩・首>
このケースで最も治療のウェートを置いて治療するポイントは、肩から首の後ろにかけて筋肉や組織の力が異常に弱って、弾力性のない状態です。

この診断は、手のひら、指先の感覚で診断する”触診”の診断で行います。長い間の臨床の経験で磨き上げる指先の感覚で病的な所見であるのかの判定です。
私は、この患者さんの脈を診て、脈が異常に弱い脈であると判定した事と肩から首の状態がタブタブとした力の弱い状態は、鍼専門的には”虚の所見”(病的に力のない状態)を改善する事が、めまい、頭痛、頭重、集中力の低下などと深く関係していると直感しました。
また、この病的な状態を改善すれば楽になります、と確信を持ってお伝えしました。
<肩全体>

そこで、肩全体に0.18ミリの鍼で接触鍼という手法の鍼術で、元気のない肩の表面の血流を改善する目的で、肩の表面の筋肉、血流を改善して首から頭、脳に充分な血液が供給できる状態に改善する効果がある手法です。

<首の後>

また、首の後ろの凝りが「椎骨動脈」(頭から顔面、脳に血液を供給する血管)を圧迫したり、頭の虚血(きょけつ)の原因と考え後頭部に、5ミリ〜8ミリ刺入して後頭部の血流を改善する。

<背中全体>

さらに、背中全体は、自律神経の交感神経と深く関係があり、このケースも背中全体の血流が低下している。
背中全体を元気な理想的な血流に改善する独自な手法である”円鍼”の手法を行う。この手法の効果は、疲れやすい体質の改善、虚血(体力や気力の衰え、血流不全)による緊張型頭痛、めまい、集中力の低下に有効な手法です。この手法を繰り返し行って背中全体を整えて自律神経の失調も改善しました。また、皮膚の表面毛細血流を改善した後に、角貝は、ダブルで次に、皮膚より5ミリ〜8ミリ刺入する単刺術を行います。

この様に、脈を元気な拍動に改善すると同時に、首、肩、背中、手足、お腹と身体の弱っている所を、健康な理想的な状態、血流の改善を精力的に脈診・鍼治療を行いました。


経過:

1回目:鍼治療前のC波の数値は−36でしたが、鍼治療後に−25となり、反射が出現して、末梢に血液を送り出す力、効果が出てきた。また、身体が温かくなり、呼吸が深くなって気持ちが軽くなったと言う。

5回目:首から肩、背中、腰が軽くなり、元気が出てきた。緊張型頭痛と後頭部からこめかみ、額にかけてなんとも表現しがたい感じの痛み、熱くなるような感じが少し楽になって来た・・・と言う。
多くの資料を沢山、集中して勉強出来るようになったと言う。

脈診で診断しても、脈の拍動は力強くなり、鮮明に打ち、陰脈、中脈、陽脈のバランスが良くなってきた。
また、C波の数値は、−10まで改善効果が出て来た。
この結果は、心臓に帰る静脈還流の力が改善され、新陳代謝、、末梢循環が良好になっていることを示す。

8回目:本格的にシミュレータ機に入り、テストを連続して10回行い、 最終回で運輸省の試験官が立ち会いシミュレータ機での最終チェックが入ると言う。
初日のテストを4時間 休みなく繰り返しチェックを行う。しかし、以前の様な頭痛、頭重感、めまいの症状は不思議に出ませんでした・・・と言う。

この段階では、治療前は確かに身体は疲れて、脈も弱くなり、生命力も低下してくる。しかし、鍼治療を行うと、直ちに身体も脈力も元気に改善するレベルになっている。

患者さんも、治療して頂くと、身体がシャンと元気になり、身体の内に溜まっている「何か」が流れ去っていく感じがして、身体が楽になるんです・・・と言う。

14回目:シミュレータ機に入って、テスト8回目(残りあと2回で最終フィニッシュとなる)。実は、テストの朝、突然、肩の肩甲骨の内側に激しい痛みが発生してしまい、本人はテストを断念しようかと思う程だったと言う。

「しかし、角貝先生から治療の際に、チャンスは、ピンチの顔をしてやってくる。ピンチの時もチャンスと思って頑張ってください!」という言葉を思い出して、何とかテストを無事に終えることが出来た。

そこで、背中を拝見すると、肩から背中は疲労による筋肉内の血流が低下して、首や肩、背中を支える力が低下して、筋肉に炎症が発生した状態でした。
首の後ろから肩、背中を入念に鍼治療を行って、再発しない様に治療をしておきました、とお伝えする。

18回目:明日はお陰様で最終回のテストです、体調も治療の度に良くなって来ました。めまいも頭痛もなく、集中力が高まり、元気で頑張って来ます・・・と言う。

この時点で、顔色の艶があり、脈も陰脈、中脈、陽脈と鮮明な拍動で力強く、バランスのよい理想的な健康脈となっている。
脈波も、B波は+60、C波は−5、D波は−20で、スモール波、e、f、g波が出現した理想的な血流です。心拍数は65回/minです。

患者さんから電話が入り、最終テストを無事に成功しました。よい結果を出せました・・・と言う。
現在も健康法で脈診・鍼治療を行っている。フライトは、左席(機長)で精力的に国内、海外を飛んでいます。

このケースは緊張型頭痛やめまい、気力、集中力の低下の症状ですが、私が最も力を注いだ事は、頭や首、肩、背中の血流を活発にすることです。それは、末梢循環を高める治療法によって、頭部に血液を充分に供給される状態、身体に改善しました。この手法が極めて効果的でした。


【症例30】 55才・男性
過労による腰からお尻、背中全体がジンジンする痛み。ふくらはぎが張ってシビレる痛み。会社営業部長。

生来、健康で大きな病気もなく、ハードな仕事を行ってきた。特にこの5〜6年、海外や国内の出張が多く身体を酷使することが多かった。
3ヶ月前より会社の椅子に座っていると、お尻の横から腰全体、背中全体に鈍い痛み、うずく様なジンジンとした痛みが発生して、椅子に座っていられない。特に、午後になるとジンジンとしてきて、椅子から立ち上がってしまう程。仕事に集中できない。

ゴルフの時や歩いている時は痛みはない。
展示会などで長い間立っているとふくらはぎが張ってシビれる痛み。この様な症状をどうしても治したい・・・と訴える。
→→
最初は指先より全身の末梢循環の血流の状態を加速度脈波(APG)で測定しますと、Cレベルの波型の血流でした。初診時のデーターは、心拍数は59回/minとやや遅い脈。B波のB点の数値が+48、C波のC点は−15、D波のD点は−40です。

さらに、D波以後のスモールe、f、g波が全く出現していない血流です。つまり、脈波のウェーブの容積が極めて小さい波型です。

この血流状態を解説しますと、動脈の血管に緊張があり、さらに、静脈から毛細血管の血流の低下により、心臓に帰る静脈還流の低下を示しています。
この結果、末梢の静脈や毛細血管に充分に血液が流れていない状態であることが判定されます。

この末梢循環や毛細血管の低下により、全身の筋肉内の血流が悪くなり、”うずく痛み”、”ジンジンする痛み”の原因と考えます。

また、腰から背中全体、足のふくらはぎの筋肉が異常に硬く、緊張した筋肉になってしまう原因になります。

この末梢循環の低下、毛細血流の低下は、長い間の過労の蓄積やストレス、交感神経の緊張状態の継続により、徐々に毛細血管の血流が悪くなり、筋肉が硬く、弾力性がなくなり、筋肉にクッションのない状態です。この状態が、神経や血管を圧迫して鈍い痛みが発生する理由です。
<脈診>
この状態を鍼灸医学の脈診に於いて診断しますと、脈は、細く、緊張して、鮮明に拍動が触れない病脈です。
また、中脈は緊張して、和緩のない脈で、中脈のわずか上に病的に弾く病脈があり、さらに、陽脈は、虚脈で陰陽の調和のない病脈です。

この病脈を「理想的な健康脈」に脈診・鍼治療で改善しますと、毛細血管が活発になり、筋肉のこりや痛みが取れます。また、痛みが再発しない身体になります。
<触診>
次に、患者さんにうつ伏せになって頂き、指先と手のひらで丁寧に「触診」しますと、腰全体は、筋肉は「硬い板状」に凝って、腰の芯の深い所まで強いこりがあります。
また、背中全体は「筋肉が硬く、詰まった、クッションがない筋肉組織となっていました。」

患者さんに、この異常に硬くなった筋肉を柔らかく、弾力性のあるしなやかな筋肉に改善することが治療で重要です・・・スポンジの様なクッションがある柔らかい状態が理想的です。・・・とお伝えしました。
治療:
最初に、腰から背中全体、足のふくらはぎのツボに、0.18ミリの鍼を5ミリの深さで置鍼の手法を行いました。

<腰・背中・ふくらはぎ>
この手法によって、皮膚の浅い所の毛細血管の血流を活発にして、筋肉の表面の凝りを取り去る効果が目的です。
また、自律神経の過緊張を取り去り、ジンジンした鈍い痛みに有効です。この手法を30分間行いました。

次にお尻の横から腰全体、背中全体、肩全体に、0.18ミリの銀鍼で皮膚の表面の血流を改善する目的に、接触鍼の手法を行いました。
この手法は、柔らかい筋肉、しなやかな筋肉に改善するとき極めて有効な手法です。また、鈍い痛みがなかなか取れない時や、痛みが筋肉の内に”こもる”痛みを取り去るのに有効な手法です。
<背中全体>

<腰全体>
さらに、肩から背中、腰全体に、円鍼(24金の円い棒状の鍼)の手法を行いました。この手法は、強い肩こり、首のこり、背中全体の硬く、緊張した筋肉を柔らかい、弾力性のあるよい筋肉に改善するときに極めて有効で効果がある手法です。
この円鍼の手法は、鍼専門的には、「衛気」(えいき)、皮膚の表面から「肌肉」(きにく)、皮膚から筋肉の表面までの柔らかい組織を言います。
この衛気がスムーズに流れますと、西洋医学での毛細血管の血流が活発になる効果があります。
また、過労、慢性疲労、疲れやすい体質に極めて効果がある手法です。

角貝は、この東洋医学の衛気、陽気の流れと西洋医学の末梢循環、毛細血管の血流は相関性があると考えます。
従って、この皮膚の表面の血流を改善する手法である「円鍼」を多く用いる理由です。

このケースも何回も何回も繰り返し、この様な手法を行い、末梢循環、毛細血流を活発に力強い血流に改善しました。

経過:

治療を行ってから5回目、椅子に座っているとジンジンする鈍い痛みが取れて楽になってきた、午後になってもお尻の横側から腰全体、背中全体のうずく様な痛みが出ない。椅子から立ち上がってしまう事がなくなった・・・と言う。
8回目:B波のB点の数値は、+56になり、C点は、−12、D点は−25となる。D波以後のスモールe波が出現しはじめた。このe波が出現(末梢に血液が流れる圧力を示す)することが末梢循環、毛細血流を改善する大切なポイントです。
このe波が出現して、次のステップは、f波、次にg波が出現すれば、末梢循環は完全に良い血流に改善する効果が期待できる。

また、このスモールe、f、g波のウェーブが出現する鍼治療を行いますと、老化しにくい身体、老化予防の効果、疲れにくい体質に改善する効果があります。
若い血管、若い身体に改善するためには、このポイントをチェックすることが重要です。
24回目:会議で長く座っていてもジンジンする鈍い痛みは全く出なくなり、安心して仕事に集中できるという言う。また、長く立っていてもふくらはぎの張る痛みの症状も全くなくなった。腰から背中、足が軽くなって、気持ちと身体がグングンと調子が良いと言う。

患者さんは、あと15年間は、仕事とゴルフをバリバリと元気でしたい・・・と言う。
この機会に、元気で病気が出にくい身体にしたい・・・!と言う。
3ヶ月間、多忙なスケジュールの中を精力的に治療に通って頂いた。

その結果、脈波データーもB波型のレベルに向上改善した。B点は+60、C点は−5、D点は−25で、スモールe、f、g波が大きく出現した。理想的な血流となった。
ちなみに、このレベルの血流は血管年齢で判定しますと、15歳以上若い血管の年齢となります。

鍼灸医学の脈診に於いても、中脈(血管の中心部の拍動)が鮮明に拍動して、陰脈と陽脈が力強い生命力のある良い脈、健康脈に改善しました。また、背中から腰まで筋肉は柔らかくしなやかな筋肉となり、皮膚の艶は、スベスベとした透明度のある健康の肌となる。

9月から中国と台湾の工場の総責任者として出張に出かけました。

このケースで私が最も改善したかった事は、硬い筋肉のこりと末梢循環、毛細血流を理想的な良い血流に改善することでした。
このことは、老化予防や病気になりにくい身体と深く関係するからです。
また、このケースの治療が成功したのは「継続は力なり」で、繰り返し改善治療をさせて頂いたことです。

健康で元気に長生きするコツは、働き盛りの時に、ハードな仕事を行っている時に、一度、身体の芯から若い細胞に、若い身体に、若い血管に改善する必要があります。

脈診・鍼術は、若い身体に改善する手法として極めて有効です。


強い目的意識を持って身体をバックアップすることです。
また、どんどん積極的に夢や目標に向かって行動することがとても大切です。
健康で元気がすべてのベースのエネルギーになっています。

私は、人生で時間ってすごく大切で価値のあるものだと思っています。
本当に生命力のある健康状態、回復力の強い理想的な身体になりますと、
人生の「時間」がさらに「有意義」になるものと感じています。

  たいせつな身体を大事にすること、
  そして、新たなる可能性に向かうこと。


 
当總健鍼灸治療センターに於ける脈診・鍼治療の

臨床の流れをご紹介しています。

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